全日本・食学会 ALL JAPAN FOOD ASSOCIATION

      
【開催日】
2023年3月19日(日)10:00~17:30
【開催場所】
大阪ガスショールーム ハグミュージアム

2023年3月19日(日)、4年ぶりとなる全日本・食サミットが開催されました。会場は大阪ガス・ハグミュージアム。2022年は全日本・食学会が10年目となり、もう一度新たに活動を見直そうとした年です。

今回テーマは、その思いを込めた「REBORN」~時代の変化と共にもう一度生まれ変わる~。基調講演では、理事長と共に各地青年部代表も出演し、これからの食の世界についての意見交換行いました。次世代への継承もこれからの食学会の課題の一つとなりました。


【開会式】


開会式で村田吉弘理事長は、「食をとりまく環境が変化するなか、料理人が勉強することで次の時代を変えることができます。今日がなにかのきっかけとなれば」とコメント。

全11講演が行われ多くの料理関係者が足を運びました。

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開会挨拶:村田理事長、来賓挨拶:農林水産省大臣官房輸出促進審議官兼輸出・国際局 山口靖様



【H-1】 基調講演 レストランのこれからを考える


「レストランのこれからを考える」ために、「レストランビジネスは持続可能か」など119名の料理人に対するアンケートを実施。その結果を基に、青年部の代表4名と村田吉弘理事長が意見交換。88.2%が持続可能と好感触な回答をするなか、小澤善文氏は人材不足、片山城氏は人材育成、前田元氏は労働環境など実際に感じている課題を意見しました。

それらを見直し、行動することでレストランが持続できる環境を作りたいとの意見の一致があり、食サミットもその一役を担うことを提言しました。

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村田理事長、小澤善文氏(Wakiya)、一木敏哉氏(懐石いっ木)、前田元氏(MOTOI)、片山城氏(心根)門上副理事長(モデレータ)



【H-2】植物性“超”動物感 ~油脂とたん白はおりなす味覚革命~


植物性油脂と植物性たんぱく質で動物性のおいしさを作り出す技術MIRACORE®の解説後、3名の料理人よりメニュー提案。

堀井良教理事は「カツオ出汁と同等のコク」があると話すMIRACORE®の出汁を使ったそばを開発。塩ラーメンを作った松原龍司理事はMIRACORE®によって減塩になることを報告。杉浦仁志氏は、大豆ミートやキノコにデミグラスソースを合わせ、ヴィーガンメニューの可能性を示唆。試食後、会場からは「本当に植物性のみ?」との驚きの声があがりました。


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堀井良教理事(更科堀井)、松原龍司理事(龍旗信)、杉浦仁志氏(ONODERA GROUP)、富研一氏(不二製油グループ本社)、和田有史氏(立命館大学)



【H-3】ドリンクペアリングのデザイン


ドリンクペアリングをデザインするために、川崎寛也氏が人間の味覚や嗅覚などの感覚の仕組みや、相性のタイプを科学的に解説。

ソムリエの岩田渉氏は、ドリンクの品種や産地、タイプに留意したペアリングの組み立てを実施しました。料理人の高山英紀氏も食材のテクスチャーなどに注目し、料理とのペアリングを提案しました。科学、料理、ドリンクと、異なったアプローチからペアリングを考えるよい機会となりました。


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川崎寛也氏(味の素 食品研究所)、岩田渉氏(THE THOUSAND kYOTO)、高山英紀氏(アントルヌー)



【A-1】 日本の食文化のサスティナビリティ


日本の食文化のサステナビリティを考えるにあたって、阪田徹氏は、世界における観光の経済成長率が著しいこと、日本への観光目的は食文化の体験であることなどから、継続的な日本の食文化のブランディングの必要性を講義。

高橋義弘氏は魚食文化の継続のための活動や、450年以上続く自身の店での様式やマナーを受け継ぐ重要性について、山口浩理事は料理人こそが学び、料理人の評価基準をつくることが、料理人のサステナビリティであり、それが食文化の継承につながると話しました。


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阪田徹氏(SAKATA ISHIYAMA OFFCE)、高橋義弘氏(瓢亭)、山口浩理事(神戸北野ホテル)



【A-2】 養殖魚や未利用魚の新しいおいしさ ~産学連携で目指す新構造~


海洋資源激減の今、松尾英明理事は「天然物が一番」という料理人の価値意識を転換し、環境負荷が少ないなどの新しい価値を見出そうと、関西の料理人を中心に昨年『RelationFish株式会社』を設立。その活動を報告しました。

近畿大学農学部教授・澤田好史教授は「サステナブルな魚食」と題してアイナメなどの野菜くずを使った養殖について講演。島村雅晴氏らは未利用魚ナルトビエイを使ったメニューを考案し、そのおいしさと可能性を周知しました。


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松尾英明理事(柏屋)、澤田好史氏(近畿大学農学部教授)、島村雅晴氏(雲鶴)



【A-3】Chefs for the Blueとのコラボレーション ずっとおいしい魚を楽しめる未来をめざして


Chefs for the Blue・佐々木ひろこ代表は、「日本の食文化は海からできている」と話し、漁獲高がここ35年で1/3になっている現状を報告。

小川洋輔氏は、魚を食べる側と獲る側のバランスを考慮した新しい水産システムの必要性を提案。前田元氏は生態系を壊しかねない安易な養殖に疑問を投げかけました。酒井研野氏は「環境負荷をかけずに今まで使ってこなかった食材」を求めて今回はクジラに注目し、懐かしくて新しいメニューを開発しました。


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前田元氏(MOTOI)、小川洋輔氏(おが和)、酒井研野氏(研野)



【C-1】 長期放牧肥育・シェフ牛の可能性


原田英男氏がシェフ牛事業の経緯と意義を改めて説明した後、千葉祐士理事はシェフ牛の特性を分析。脂肪酸組成や黒毛和牛より融点が高い特性などを報告しました。また、A4、A5といった流通用の基準ではなく、牛肉は食味の基準を持つべきと意見。

シェフ牛の仕上げ肥育をした生産者の磯沼正徳氏は、エコフィードの給餌やコーヒー豆の殻の牛床など、持続可能な酪農の実践について話しました。山根大助理事らは、シェフ牛と黒毛和牛の食べ比べメニューを提案し、会場からはシェフ牛のうま味の強さに感心する声が聞かれました。


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原田英男氏(畜産環境整備機構)と磯沼正德氏(磯沼ミルクファーム)、千葉祐士理事(格之進)、山根大助理事(ポンテベッキオ)



【C-2】 味道/MIDO


「味道」は、料理人とタッグを組んで日本の食文化をグローバルに配信し、未来へ進化させるとその目的を説明。

続いて、フードエッセイストの平野紗季子氏の進行で、「あなたにとって、味道とは?」をテーマに対談。脇屋友詞副理事長は「若い人と融合して、この世界が好きだと思えるように」とコメント。落合務シニアアドバイザーは「今は動画などでなんでも学べる時代。教わった側が信念をもってどう実践するかが肝心」と続きます。佐々木浩理事は「食を通じて人と人をつなげたい。それができる料理人を誇りに思う」と話しました。


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脇屋友詞副理事長(Wakiya一笑美茶樓)、落合務シニアアドバイザー(ラ・ベットラ・ダ・オチアイ)、佐々木浩理事(祇園さゝ木)と平野紗季子氏(フードエッセイスト)



D-1 鉄板会議「コナモン100選」 食都大阪の焼き技と未来


大阪コナモン文化を牽引する名店社長3名と熊谷真菜理事との軽快なやり取り。会場の笑い声も絶えない楽しいトークセッションからスタートしました。

「完成形はなく、いまだ進化中」というお好み焼きを『ゆかり』の焼き名人が実演。返す回数、ヘラの使い方などの鉄板技を細かく解説。『甲賀流』は、ふわとろ食感のたこ焼きの焼き方を教示しました。

“大阪コナモンを世界へ”との言葉通り、熱い勢いが感じられるコナモン体験でした。


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熊谷真菜理事(日本コナモン協会)、垣内健祐氏(上方お好み焼きたこ焼き協同組合)、山下真明氏(道頓堀たこ焼き連合会)、田中由弘氏(道頓堀たこ焼き連合会)



D-2 世界を変える種をまく! ~料理人の惚れ込む哲学と技~


肉も魚も付加価値のある唯一のものを目指して選び、扱い、水分コントロールに留意する食材の流通や、生産者とのつながりについて、新保吉伸氏と前田尚毅氏らがそれぞれの考えを述べ合いました。

続いて「bean47」で表彰された生産者が登場。岐阜の「和良鮎」「ジビエ鹿肉」、香川「瀬戸内キャビア」、 淡路島「金猪豚」、那智勝浦「まぐろ」などの食材が、生産者の熱い思いとともに紹介されました。


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新保吉伸氏(サカエヤ)と前田尚毅氏(サスエ前田魚店)、寺内信二氏(李荘窯業所)、元満真道氏(ジビエ工房めいほう)、板坂直樹氏(CAVIC)



【閉会式】


閉会式では、脇屋友詞副理事長が、関係者への感謝とともに「夢をもって学ぶ」ことの大切さについて話しました。

続いて、門上武司副理事長は、「今日知ったことを自分ごととして考えてほしい。各プログラムでも取り上げられていた、料理人をとりまく環境課題、次世代育成課題については改めて提言していきたい」と締めくくりました。


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脇屋友詞副理事長(Wakiya一笑美茶樓)、門上武司副理事長(ジオード)