6月3日(金)、京都のフレンチレストラン「MOTOI」にてAJFA勉強会「フランス料理の古典を学ぶvol.1」を開催しました。
講師は辻調理師専門学校 技術顧問(西洋料理) 木下幸治氏。
「私が料理の世界へ入ったのは1973年です。
本日は、80年代のフランス料理をそのまま表現したいと考えています」と木下氏。
「フュメ・ド・ポワソン」の取り方のレクチャーをはじめ、
「ソース オランデーズ」、「ソース ヴァンブラン」、「ブールブラン」の実演と講義。
さらには「舌平目のデュグレレ風」の実演、試食へと続く2時間半にも及ぶ深みのある勉強会となりました。まずは「フュメ・ド・ポワソン」の取り方を教わります。
鍋にバターとサラダ油を入れ、
タマネギとエシャロットを焦がさないように炒め、魚のアラを加えます。
そしてアラの生臭さが消えて香ばしくなるまで、アラの水分を抜きながら炒めます。
白ワインを入れ、アルコール分を飛ばし、水をひたひたになるまで注ぎ入れます。
粒コショウ(ホール)とブーケガルニを加え、
沸騰後、最初に出てきたアクを取り、30分程煮込み、シノワで濾します。
実演の途中にも、参加者からの質問が飛び交います。
「干したり、塩を施した魚を使うことはないのですか?」とは、
池邉正憲さん(イタリアンレストラン「ラーゴ」)。
木下先生曰く、「ダシの場合、一切使いません。塩を含んだ魚を使うと、後で塩味が決めれなくなりますから」。
試飲では、「和食のダシとは全く違いますね。和もフレンチのダシもどちらにも良さはあります。
でも、フュメ・ド・ポワソンは油脂が入りますから、やっぱり“フレンチのダシ”ですね」と、佐々木浩理事(祇園 さゝ木)。
西洋料理は足し算であること。また、「フュメ・ド・ポワソン」を煮詰めたり別の味を加えて、味を構成していく応用があることも学びます。
次は「ソース オランデーズ」の実演です。
卵黄と水を湯せんにして、かき立てたところに澄ましバター(湯煎にかけたもの)、レモン汁、塩、コショウ、カイエンヌ・ペパーを加え、味を引き締めます。
「80年代のフランス料理は、このソース オランデーズに熱を加え魚料理にデコレーションを施すこともありました」と木下氏。
サラマンダーで火入れをし
ソース オランデーズが膨れはじめ、表面に焼き色が付いた状態です。
参加者には、ソース オランデーズの試食もしていただきました。
続いて、「ソース ヴァンブラン」の実演へ。
「白ワインの酸味とエシャロットの甘みがポイントです」と木下氏。
エシャロットとシャンピニョン、白ワインを煮詰め「フュメ・ド・ポワソン」を加えてさらに煮詰めます。
この時点で、最初のテイスティングです。
「濃くてやや酸っぱいですね」といった声も聞かれ、「ここで生クリーム(47%)を加え、濃くしたものを和らげるのです。
フランス料理ならではの手法ですね」と木下氏。
生クリームでコーティングされ、じつにまろやかな味わいに。
さらには「ブールブラン」の実演も。
エシャロット、白ワイン、白ワイン酢を煮詰めた「レデュクション」に少量の生クリームを加えて混ぜ、たっぷりのバター、レモン汁、塩、コショウで味を調えます。
木下氏曰く、「乳化はしていません。これは“白濁”している状態です」。
これにはバターの温度と、バターが溶けていく温度との関係が重要だそうで、「サイコロ状に切ってすぐのバターを加えて、モンテすると濃度がつきやすい」とのこと。
木下氏による講義と実演が続きます。
最後の実演は、「舌平目のデュグレレ風」です。
デュグレレとは、アントナン・カレームの弟子であった「アドルフ・デュグレレ」のことであり19世紀のフランス料理界に名を残した料理人のひとり。
彼が生み出した料理が「舌平目のデュグレレ風」なのです。
この日は天然の平目を使用。
みじん切りにしたエシャロット、タマネギ、トマト、パセリ、そして白ワインとフュメ・ド・ポワソンを加え、
スチームコンベクションオーブン(220℃)で7分加熱します。
小さなバッドに移し替え、熱を逃さないようラップでしっかりと密閉している間に、
たっぷりのバター、レモン汁、塩、コショウを用いたソースの仕上げへ。
ポム・ア・ラングレーズを添えて「舌平目のデュグレレ風」が完成しました。
「MOTOI」のレストランスペースで、「舌平目のデュグレレ風」の試食です。
「バターが驚くほど入っているのに、全く重たさを感じませんね」とは、高橋雄一さん(Ikariya523)。
また、前田元さん(MOTOI)は、
「自分が使っているバターは、まだまだ足りないです」など、さまざまな意見交換がなされました。
最後に木下氏はこう話してくださいました。
「今日、味わっていただいたのはフランスで140年以上、食べ続けられている料理です。
普遍的な料理というのは後々、残るものでしょうし、時代に合わせて、万人受けするようにどう工夫していくかが大切です。
料理人である皆さんが忘れてはならないことは、やはりお客様に喜んでいただくこと。
そこを忘れず、前に進んでほしいです」。
最後に。本勉強会の講師を務めてくださった木下さん、
調理補助及び、勉強会の会場を提供いただいた「MOTOI」シェフ前田元さん、
調理補助をいただいた「Ikariya523 」のシェフ高橋雄一さん
心より御礼申し上げます。
今回のAJFA勉強会は「フランス料理の古典を学ぶvol.1」でした。
ですので、今後も続けさせていただきたいと考えています。
vol.2の内容や日程が決定次第、AJFAのホームページやFacebookでお知らせいたします。