「祇園 さゝ木」にて、AJFA勉強会を開催しました。テーマは・・・
〜木下幸治氏を迎えて〜
いろんな料理ジャンルに応用できる
フランス料理のソースと古典スイーツ
講師は、辻調理師専門学校 技術顧問(西洋料理)の木下幸治先生です。
2時間強にも及ぶ、講義と実演、そして試食が繰り広げられました。
「オマールのアメリケーヌソース」をはじめ肉の焼き加減に関しての講習と、焼き方の実演。
さらに、肉のソース「ソース・マデラ」や「赤ワインソース」の調理や講義もあり、
古典的なデセール「ウ・ア・ラ・ネージュ」のデモンストレーションへと続きました。
「祇園 さゝ木」のカウンターに、参加者がズラリと揃います。
また、店のスタッフたちは、立ち見で講習を聞くなど皆、真剣な眼差しです。
まずは「オマールのアメリケーヌソース」の作り方を教わります。
「オマールの殻はオリーブ油を熱した鍋に入れて炒めた後、シノワで濾し殻を押しつぶし、さらに煮る場合が多い。ですが私は、その工程に疑問を持っているのです」と木下先生。
なぜなら20分以上、炒めたり煮たりすると、甲殻類のエグみや苦味が出てくるからだそう。
そこで。木下先生は「炒める前に、殻を先に潰す」という手法を取りました。
殻から身が出やすくなり、甲殻類の旨味が出やすいとのこと。
「炒めるというよりは“焼く感覚で”火を入れます。
殻をいかに高温で焼くかが最大のポイントです」とのことでした。
その後、バターを加え、ミルポワを炒め、コニャックを加えてフランベし、白ワインを加えて半量に煮詰め、カットトマト、ダシ(鶏のダシ、フュメ ド ポワソン)、エストラゴンやブーケ・ガルニを加えて煮込み、シノワで濾します。
この段階で、味見です。
参加者からは「エビそのものの、ワイルドな味ですね(スター食堂 西村裕行さん)」
「まだ未完成といったイメージ(一之船入 魏禧之さん)」といった感想も。
その後、ブール・マニエ(バター:小麦粉=1:1)を加え、さらに目の細かいシノワで裏漉しをします。
生クリームを加えて軽く煮て、塩・コショウ・カイエンヌ ペパーで味を調え「オマールのアメリケーヌソース」が完成しました。
参加者からは、「想像していた以上に、エビの旨味が上品です」
「じつにクリアで、優しい味わい」といった声も。
「ikariya523」の高橋雄一さんは、「僕の場合、ソースをもっと煮詰めます。
なぜなら、泡に仕立てて、ふわっとエアリーな質感にするからです。
となると、軽やかなアメリケーヌソースだと物足りなくなるから、しっかり煮詰めて漉したものを使います」。
何が正解で何が間違い、というのは存在せず、
料理との相性や、用途に合わせた調理法というのが常に求められているのです。
この後、肉の焼き加減の実演、さらには肉料理のソース「赤ワインソース」と「ソース・マデラ」についてのレクチャー、そして「ソース・マデラ(この日はポルト酒を使用)」のデモンストレーションが繰り広げられ、試食へと続きました。
参加者17名という少人数のなか、
木下先生が目の前で、講義と実演を繰り広げ、あちこちで質問も飛び交います。
至近距離のコミュニケーションはAJFA勉強会ならでは。
最後は、デセール「ウ・ア・ラ・ネージュ」の実演です。
リヨンにある「ポール・ボキューズ」のスペシャリテのひとつでもある「ウ・ア・ラ・ネージュ」は、卵白に砂糖を加えて泡立てたメレンゲに熱を通して固め、クレーム・アングレーズに浮かべたデセールです。
器にクレーム・アングレーズを入れ、メレンゲをのせ、砂糖と水を煮詰めて作った、カラメルをかけ、出来上がりました。
「懐かしいデセールですね〜」と話す参加者もいれば、「初めて味わいました。軽やかだからいいですね」といった声も。
魚料理、肉料理、そしてデセールの試食を終えた参加者からは、
「木下先生の、フランス料理における80年代の体験談が聞けて良かった」、
「ソース、デザート、肉すべてが勉強になりました」、
「古典フランス料理と現代の違いのポイントを分かりやすく教えていただいた」、
「基本を分かりやすく教えていただいたので、今の時代 嗜好に合わせるために何を残すべきかを再認識した」など様々な声を聞くことができました。
最後に。約2時間半にわたる、講義と実演を繰り広げてくださいました木下幸治先生、
会場を提供してくださいました、佐々木浩 常任理事(祇園 さゝ木)、
調理のサポートをしてくださった、フランス料理「MOTOI」の前田元シェフ、心よりお礼申し上げます。